インプラント手術による死亡事故

インプラント手術後に患者が死亡

インプラント死亡事故

2007年の東京の八重洲の飯野歯科医院でインプラント手術の失敗による死亡事故が発生し、大きなニュースとなりました。

歯の治療は痛みが伴い、時間がかかることも多いため、嫌われる傾向がありますが、命に関わるような治療はないという安心感もあります。それだけにこのニュースは大きな衝撃を持って受け止められました。

東京都中央区の歯科医院で事故は起こりました。術中に誤って血管を切ってしまい、出血が止まらない状態になってしまったのが原因といわれています。その患者は、搬送先の病院で呼吸困難状態に陥ってしまい死亡してしまいました。亡くなったのは、インプラント手術の翌日のことです。

患者は70代の女性で、その後遺族は事故を起こした歯科医と歯科医院を相手に損害賠償を求めた訴訟を起こしています。

成功率が非常に高いといわれる反面、医師の技術不足による失敗例が指摘されているインプラント手術。この死亡のニュースによってますますその不安点が増幅されてしまったことは否めません。死亡するリスクを抱えてまで受ける手術なのか、と疑問を覚える人も出てきているでしょう。

ただ、インプラント手術が導入されてからこれまで血管を切った死亡例は国内ではこれ一件だけ。現在の普及の度合いを見れば、慎重になっても神経質になる必要はないと思います。間違いないのは安心して手術を受けられる歯科医院選びが重要になるということでしょう。この事件がきっかけでせっかくのインプラント手術が下火になるようなことにならないようにしたいものです。

インプラント死亡事故で歯科医を書類送検 業過致死容疑 (朝日新聞から一部引用し加筆)

東京都中央区八重洲の歯科医院(飯野歯科)で2007年にインプラント手術を受けた患者がその後死亡した事故で、警視庁は2011年8月1日、医院の実質的経営者で施術した歯科医(67歳)を業務上過失致死容疑で書類送検した。手術中に注意を怠って口内の動脈を傷つけ、死亡を招いたと判断したためである。警視庁によると、飯野久之歯科医は「ミスはなかった」と容疑を否認しているという。

2011年、今回書類送検されたのは飯野歯科の飯野久之歯科医師です。

インプラント書類送検

捜査1課によると、都内の会社役員の女性(当時70歳)は2007年5月22日午後、下あご右奥歯の手術を受けている最中に具合が急変。近くの総合病院(聖路加病院歯科口腔外科)へ運ばれたが翌23日午前にその出血に伴う血腫により窒息し、低酸素脳症により死亡した。

捜査1課が司法解剖により調べたところ、右奥歯の人工歯根を埋め込むためにドリルで開けた穴があごの骨を貫通して、その下の動脈が切れていた。結果、死因は出血などによる窒息と判明した。

業過致死容疑とされた飯野久之歯科医師には、下の動脈の存在を認識し危険性を予見できたのに、注意を怠ったままドリルで骨に穴を開けた疑いがあるとのこと。

容疑者である歯科医師は、「この動脈の存在について、事故当時の医学水準では一般的ではなかったとして事故は予見できなかった」と主張しているが、警視庁捜査1課は複数の専門家から聴取するなどした結果、一般的に知られていることで、歯科医は危険性を認識できたと判断をした。それにもかかわらず、飯野歯科の飯野久之歯科医師は注意不十分で、動脈を損傷させたものと結論づけた。

インプラント手術は、あごの骨にドリルで穴を開けて人工の歯根を埋め込み、人工の義歯を装着する治療法です。捜査関係者らによると、歯科医はこの手術の権威とされ、事故当時で約20年の経験があり、症例数は約3万本にのぼるとのこと。

インプラント死亡事件に関しての解説

この事件とは、歯科医師が捕まったということでなくて、患者が亡くなったことです。(歯科医書類送検問題でなくて、インプラント死亡事故が起こったのが問題なのです。)

インプラント書類送検

手術した部位は、インプラント手術を手掛ける歯科医師なら誰でも知っているはずの血管がある。それを知っている歯科医師は、細心の注意を払うので、まず問題を起こすことはない。

手が滑ったということがあっても、「知らなかった」とは考えられないでしょう。通常はCTを撮影してから診査・診断をし、手術に望むので、このような問題は起こらないはずです。(CTに血管は写らないが、CTに写る顎舌骨筋線の近くに血管が走行しているのは常識です。)

今回のインプラント手術による死亡は、世界的に見てもまれなことであり、今回の事件を受けても、インプラント手術は非常に危険な手術とは見られていないのです。

つまり、歯科医師個人の問題とみられているのです。歯学部を卒業した者なら知っているはずの解剖学の知識を持っていれば、今やっていることの何が安全で、どこから注意しなければならないかはわかるはずだからです。

今回の事故は、インプラント埋入後、口腔底出血に気づき、聖路加病院歯科口腔外科へ搬送したが、すでに心肺停止、脳障害をきたしており、ICUでの処置のかいなく死亡してしまったものです。

ドリルが骨を突き抜けた患者がすべて亡くなるわけではありません。血管を切ったからすべての方が死亡するわけではありません。

歯科医師が出血に気が付いたのは、埋入をした後であるとも言われていますので、検察側が主張するであろう「ドリリングをして血管を損傷させたのに対処せずに埋入を行った」のかどうかは、今のところ不明で、言い分の食い違いところでしょう。これは、裁判官の判断を待たずに批判や議論をするのは、時期尚早でしょう。

インプラント死亡事故の報道やインターネットの書き込みついて

この「インプラント失敗.com」では、飯野久之歯科医師を日本中の皆で責めることに、「ちょっと待ってね!」という立場をとらせて頂きます。

もちろんお亡くなりになった女性にはご冥福をお祈りすると共に、遺族のみなさんが心穏やかに暮らせるようになることを願います。

さて、報道にあるように「歯科医はこの手術の権威とされ、事故当時で約20年の経験があり、症例数は約3万本にのぼる」というのが事実なら、事故の寸前まで、多くの患者の要望に応え、歯科インプラント治療をして、多くの患者を幸せにしてきたはずです。

彼の過去の努力、実績は、今回の重大な失敗で帳消しになるのでしょうか?

もちろん、事故とはいえ、人の命を奪うことは、本意ではありません。遺族も苦しいでしょうが、歯科医師やその家族にとっても人生を変える大きな問題で、歯科医師は非常に悔やみ、後悔し、反省していると思います。

遺族の苦しみも相当なものでしょう。患者がさらに幸せになろうと受けたインプラント治療で死ぬなんて思わなかったはずです。のどが腫れて呼吸ができない苦しみは相当なものでしょう。

しかし、私たち第三者は、事実や当事者の本当の気持ちを知ることはできません。事故の現場も見ていません。

インプラント死亡事故の書き込み

あまり、インターネットの書き込みで無責任な誹謗中傷は行わないことが賢明です。

女性の遺族4人が飯野歯科と飯野院長を相手取り、約1憶9000万円の損害賠償を求める民事裁判を東京地栽に起こしたことや、飯野執刀医が容疑を一部否認していることについて第三者が余計な書き込みをして当事者を困惑させない方がいいのではないかと思います。

今後、インプラント治療を検討している患者が必要以上に怖がっている場合に、正確な情報を提供し、患者はそれを踏まえて治療に望む、もしくは治療をやめるという決断をすることになるでしょう。

インプラントの手術を受けた直後に亡くなるというのは、数億人に一人のことであり、交通事故よりもまれなことです。むしろ、歯科医院への通院の交通中に不幸な事故あう方が可能性は高いのです。

「インプラント死亡事故」によって幸せになった人は一人もいません。このようなことが起きないように、教訓として裁判の結果を見守りたいと思います。

そして、この歯科医師が判決に従い、民事、刑事の罪を償った後には、社会は、元受刑者を責めずにうけいれてあげましょう。

亡くなった方のご冥福をお祈りいたします。

インプラントトラブルについて考える

  • 日本国内で大きな話題になったトラブルと言えばインプラント使い回し事件が挙げられます。
  • インプラントの治療費を払わない問題患者はモンスターペイシェントです。 患者側の問題ですが、これもインプラントトラブルですね。
  • 自分がトラブルに巻き込まれないだけではなくて、自分がトラブルを起こさないことも心がけたいものです。